理系専門・受験戦略コラム

波の干渉|公式を覚えていても、
入試問題で式が立たないのはなぜか

この記事で扱うこと

  • 干渉条件の公式を覚えていても、式が立たない理由
  • 光路差と反射時の位相変化をどう整理するか
  • 入試標準問題で、公式を使う前に考えたいこと

波の干渉では、強め合う条件と弱め合う条件を 覚えていることが、問題を解くための出発点になります。

しかし、実際の入試問題では、 公式を覚えているだけでは式を立てられないことがあります。

どの2本の波を比べるのか。 どこに光路差が生じるのか。 反射による位相変化はあるのか。

こうした条件を整理して初めて、 強め合う条件・弱め合う条件を使えるようになります。 今回は、ニュートンリングを題材に考えてみます。


まず、問題を見てみましょう

次は、大学入試の出題を参考に、 弘道塾で再構成した問題です。
個々の計算は基本的ですが、 幾何と波の干渉を組み合わせて考える必要があります。

入試標準問題:ニュートンリング

曲率半径 R の十分に薄い凸レンズを、 水平な平面ガラス板の上に置く。 レンズ下面とガラス板上面の間には、 薄い空気層ができる。

上方から波長 λ の単色光をほぼ垂直に入射させ、 反射光を観察すると、同心円状の明暗のしまが見えた。

レンズとガラス板の接点を O とし、 O から水平距離 r の位置での 空気層の厚さを d とする。 R は d に比べて十分大きく、 d² は無視できるものとする。

空気の屈折率は1.0、ガラスの屈折率は1.5とする。 空気からガラスへの反射では位相が π だけ変化し、 ガラスから空気への反射では位相変化がない。 また、空気層内での光の進行はほぼ鉛直とみなす。

  1. レンズの球面の幾何的関係から、 d を R と r で表せ。
  2. 反射光を上から観察するとき、 接点 O は明るく見えるか、暗く見えるか。 2本の反射光の位相に着目して理由を説明せよ。
  3. O の外側に現れる暗い円を、 内側から順に第1、第2、…、第m暗線とする。 第m暗線の半径を rₘ とするとき、 rₘ² と m の関係を求めよ。

問題の参考出典:2009年 茨城大学入試・物理。 ニュートンリングに関する出題を参考に、 弘道塾で問題文・設問を再構成。

ここで、すぐに干渉条件の公式を書くのではなく、 まず「どの2本の光が干渉しているのか」を確認します。


どの2本の光が干渉するのか

ニュートンリングでは、 レンズ下面で反射した光と、 空気層を通って平面ガラス板の上面で反射した光が 干渉します。

完成した光路図を見る前に、 まずは光がどのように進むのかを順番に追ってみましょう。

光の経路を順番に確認する

「次へ」を押すと、光の経路が一段階ずつ表示されます。 レンズ下面とガラス板上面の反射位置に注目してください。

① 光が入射する
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ニュートンリングの反射光を段階的に確認する図 凸レンズ下面と平面ガラス板上面の拡大模式図。 青い入射光がレンズ下面に達し、 一部はその場で反射する。 残りは空気層へ透過し、 ガラス板上面で反射して戻る。 最後に2本の反射光を比較する。 光線はほぼ垂直入射として表現している。 レンズ下面 ガラス板上面 平面ガラス板 入射光 反射光① 反射光② d 光路差 ≒ 2d 反射による相対的な位相差:π

上方から入射した光が、 レンズ下面に到達します。 ここが最初の分岐点です。

反射位置付近を拡大した模式図です。 ほぼ垂直入射として扱い、 光線を識別するために経路をわずかにずらしています。 空気層内のU字状の部分は、往復経路を区別するための表現です。 実際の光が曲線を描いて進むことを意味しません。

2本の光の違いを整理すると、 反射光②は空気層を往復するため、 近似的に 2d の光路差が生じます。

ただし、光路差が分かっただけでは、 強め合うか弱め合うかは決まりません。

もう一つ確認する必要があるのが、 反射による位相変化です。


光路差が0なら、必ず強め合うのか

接点Oでは空気層の厚さdが0になります。 したがって、2本の反射光の光路差も0です。

では、中心は明るくなるのでしょうか。

光路差だけで判断せず、 反射する境界面にも注目して考えてみてください。

中心の明暗と、その理由を確認する

レンズ下面では、ガラスから空気への反射なので、 位相変化はありません。

一方、平面ガラス板上面では、 空気からガラスへの反射なので、 位相がπだけ変化します。

光路差が0でも、一方の光だけが反射時に 位相をπ変化させるため、 中心では2本の反射光が弱め合います。

実際の指導教材で整理する

干渉条件を考える際には、 経路差と位相の変化を分けて整理すると 見通しがよくなります。

次は、弘道塾で実際に使用している、 干渉条件と反射による位相変化を整理した 手書き教材です。

弘道塾の手書き教材。経路差が波長の整数倍・半整数倍となる場合の干渉条件と、固定端・自由端反射による位相変化を整理している
実際の指導で使用している波の干渉の整理資料。 画像はクリック・タップで拡大できます。

この資料では、経路差が波長の整数倍・半整数倍に なる場合の干渉条件に加えて、 固定端反射と自由端反射による位相の違いも 整理しています。

固定端・自由端反射は、位相の反転を理解するための 一つの手掛かりです。 光の反射では、境界面の屈折率の大小関係を確認します。

今回の問題では、 反射による位相のずれがあるため、 光路差だけを見て干渉条件を決めることはできません。


ここまで整理できれば、式は短くなります

干渉する2本の光、光路差、反射時の位相変化を 整理できたら、実際に式を立ててみましょう。

まずは問題(1)〜(3)を自分で考え、 その後で計算過程と解答を確認してみてください。

計算過程と解答を確認する

(1)空気層の厚さを求める

レンズの球面の幾何的関係から、 次の式が得られます。

R² = (R − d)² + r²
2Rd = d² + r²
d ≒ r² / (2R)

ここではd²を無視しています。

(2)中心Oの明暗を判断する

中心ではd=0なので、光路差は0です。 しかし、一方の反射光だけが位相をπ変化させるため、 2本の反射光は弱め合います。

したがって、中心Oは暗くなります。

(3)暗線の半径と番号の関係

反射時の位相変化を考慮すると、 暗線の条件は次のようになります。

2d = mλ

中心以外の暗線については、 m=1,2,3,…とします。

(1)で求めたdを代入すると、

rₘ² / R = mλ
rₘ² = mRλ

よって、暗線の半径の2乗は、 中心から数えた暗線の番号mに比例します。

答案として書く式はそれほど多くありません。

しかし、その前には、 どの2本の光を比べるのか、 何が光路差になるのか、 反射による位相変化があるのか、 という判断が必要でした。


まとめ|干渉条件を書く前に確認したいこと

今回のニュートンリングでは、 公式を当てはめる前に、 光の経路と反射による位相変化を 整理する必要がありました。

干渉問題で確認する4つのこと

  1. どの2本の光が干渉するのか まず比較する光を特定する。
  2. 光路差はどこから生じるのか 経路や媒質の違いを整理する。
  3. 反射などによる位相変化はあるか 光路差だけで判断しない。
  4. どの干渉条件を使うのか ここまで整理してから式を立てる。

公式を覚えるだけでなく、光の経路や反射による位相変化を確認し、どの干渉条件を使うか判断することが重要です。

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