理系専門・受験戦略コラム

栃女の物理|F=maは覚えた。
でも、いつ使うのか分からない

この記事で扱うこと

  • F=maは覚えているのに、問題になると式を立てられない理由
  • 運動方程式を立てる前に、何を整理すればよいか
  • 公式を「知っている」状態から「使える」状態へ進むための基本

物理の公式を覚えること自体は、それほど難しくありません。

運動方程式なら、F=ma。これは覚えている。

ところが、実際に問題を解こうとすると、

「Fには何を入れるのか」
「mは何の質量なのか」
「aはどちら向きなのか」

が分からず、式を立てられない。物理を教えていると、こういう答案をよく見ます。

公式を覚えているのに問題が解けないとき、さらに公式を覚えても、あまり状況は変わりません。必要なのは、その公式がどんな場面で、何を表すために使われるのかを理解することです。

F=maは、いつ使うのか

運動方程式 F=ma を例に考えてみます。

物体が加速度運動をしているとき、その物体に働く力の合計と加速度の関係を表すのが運動方程式です。ですから、問題文を読んですぐに F=ma と書くわけではありません。

まず、どの物体の運動を考えるのかを決めます。

次に、その物体に働いている力を図に書きます。重力、床や壁など接触しているものから受ける力、糸につながれていれば張力――というように、一つずつ確認します。

そして物体がどちら向きに運動するのかを考え、座標軸を決めます。その方向について、「質量 × 加速度 = その方向に働く力の合計」という関係を式にしたものが運動方程式です。

F=maという一つの式を覚えるだけなら簡単です。物理で大切なのは、問題の中から「この物体について、この方向の運動方程式を立てればよい」と判断できることです。


実際の問題で見てみます

ここは、入試物理としては基本的な内容です。

ただ、この段階で「F=maは覚えているけれど、式は立てられない」という生徒は珍しくありません。まず、運動方程式を使ううえでの基本を、実際の問題で確認してみます。

下は、2つの物体を糸でつないだ問題について、運動方程式を立てるまでの考え方を説明したプリントです。

1枚目では着目する物体と働く力を整理し、2枚目では座標軸を決めてA・Bそれぞれの運動方程式を立てています。画像はクリック・タップで拡大できます。

この問題なら、Aについて ma = T、Bについて Ma = Mg − T となります。

公式そのものは同じ F=ma です。違うのは、どの物体に着目し、どちらを正方向にして、そこに働くどの力を式に入れるのかです。ここが分からないまま公式だけを覚えても、初めて見る問題ではなかなか使えるようになりません。

問題が複雑になっても、出発点は同じです

問題が複雑になると、考えなければならない条件も増えていきます。

例えば2015年の岡山大学では、滑車・ばねと3つのおもりを組み合わせ、途中で条件が変化する問題が出題されています。

2015年岡山大学・力学の問題構成を模式化した図。滑車、ばね、3つのおもりが組み合わされている
2015年 岡山大学の出題をもとに、問題の構成を模式化

図だけでは分かりませんが、この問題では途中でおもりをばねから外し、さらに運動の途中で糸を切ります。条件が変わるたびに、どの物体に着目するのか、どの運動を考えるのかを改めて整理する必要があります。
それでも、最初にすることは同じです。

まず着目する物体を決め、その物体に働く力を整理する。

条件が増えるほど、公式を覚えていることよりも、「今、何に着目して、どの条件を使うのか」を判断することが重要になります。


公式には「使える条件」がある

これは運動方程式だけの話ではありません。

たとえば力学的エネルギー保存則も、「エネルギーの問題だから使う」わけではありません。その問題で力学的エネルギーが保存される条件を満たしているのかを確認してから使います。

物理の公式は、問題文に出てきた言葉と一対一で対応しているわけではありません。

「この言葉が出たら、この公式」と覚えるより、この公式は何を表しているのか。どんな条件なら使えるのか。まで一緒に理解しておく方が、初めて見る問題にも対応しやすくなります。

ここから先は、問題ごとの判断になります

ここまでの内容は、運動方程式を使ううえでの基本です。F=maを覚えるだけでなく、「どの物体に着目するのか」「どんな力が働いているのか」「どの向きを正にするのか」を整理して式を立てる。まずはここまで自力でできるようにしておきたいところです。

ただし、大学入試の物理がこれだけで解けるわけではありません。

模試や入試問題では、問題の設定によって見るべき条件が変わります。運動方程式だけでなく、エネルギー、運動量、円運動など別の考え方が必要になることもありますし、一つの問題の中で複数の関係を組み合わせることもあります。

その段階になると、「問題文のこの言葉が出たら、この公式」という覚え方では対応できません。何が起きているのかを捉え、与えられた条件を整理し、その問題では何を使って考えるのかを自分で判断する必要があります。

基本的な公式の使い方には、ある程度共通した考え方があります。そこまでは、上のプリントのように整理して説明できます。

一方、模試や入試問題では、複数の条件や法則をどう組み合わせるかまで自分で判断しなければならない問題も出てきます。ここから先は、覚える手順を増やすというより、実際の問題を通して「なぜこの考え方を使うのか」を一つずつ理解していくことが大切です。

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物理で、公式は覚えているのに問題になると式を立てられない場合も、答案や途中式を見て確認するところを絞り、必要に応じて問題を解いたときの考え方も一緒にたどります。どこまでは分かっていたのか、どこから迷ったのかを整理し、次に確認する内容を考えます。