理系専門・受験戦略コラム

空間ベクトル|正確な立体図が
描けなくても解ける理由

この記事で扱うこと

  • 空間でも、平面ベクトルと同じ計算が使えること
  • 内積が\(0\)という結果を、次の設問にどうつなげるか
  • 立体図を正確に描かずに、垂線の足の位置を特定する考え方

空間ベクトルの問題になると、立体の形をうまくイメージできず、手が止まってしまうことがあります。平面ベクトルでは計算できていたのに、立体図形が登場した途端、難しく感じることもあるでしょう。

しかし、空間になったからといって、ベクトルの長さや内積の計算方法が変わるわけではありません。今回は、計算によって図形の性質を明らかにし、必要な知識を組み合わせるという考え方を、入試問題で確かめます。


まず、問題を見てみましょう

2014年度日本医科大学の出題を題材に、問題の条件と設問を整理しました。

入試標準問題:空間ベクトルと四面体

四面体 \(OABC\) について、次の条件が与えられている。

\(OA=OB=OC=\sqrt{3}\)
\(\overrightarrow{OA}\cdot\overrightarrow{OB}=\overrightarrow{OB}\cdot\overrightarrow{OC}=2\)
\(\overrightarrow{OC}\cdot\overrightarrow{OA}=1\)
  1. 辺 \(AB\)、\(BC\) の長さを求めよ。
  2. 内積 \(\overrightarrow{BA}\cdot\overrightarrow{BC}\) を求めよ。
  3. 四面体 \(OABC\) の体積を求めよ。

出典:2014年度 日本医科大学 入試問題。問題文は条件と設問を保ち、弘道塾で表記を整理。

最初から立体を正確に描こうとする必要はありません。まず、与えられた条件から計算できることを確認します。


空間でも、長さの求め方は同じ

辺 \(AB\) を求めるには、平面ベクトルと同様に、ベクトルの差の長さを2乗して計算します。

\(|\overrightarrow{AB}|^2=|\overrightarrow{OB}-\overrightarrow{OA}|^2\)
\(=3-2\times2+3=2\)
\(AB=\sqrt2\)

\(BC\) についても同じ計算で \(\sqrt{2}\) になります。必要なのは空間図形専用の公式ではなく、すでに学んだ内積の知識です。

ベクトルの差の長さを2乗し、内積を使って辺の長さを求める手書き解説
長さはまず2乗から考える。画像をクリック・タップすると拡大できます。

内積が\(0\)になったら、何が分かるか

次の設問では、\(\overrightarrow{BA}\) と \(\overrightarrow{BC}\) の内積を求めます。

\(\overrightarrow{BA}\cdot\overrightarrow{BC}=(\overrightarrow{OA}-\overrightarrow{OB})\cdot(\overrightarrow{OC}-\overrightarrow{OB})\)
\(=1-2-2+3=0\)

ここで「答えは0」で終わらせないことが大切です。内積が\(0\)という結果は、2つのベクトルが垂直であることを意味します。つまり、\(\triangle ABC\) は \(\angle ABC=90^\circ\) の直角三角形です。

内積が0になる計算と、そこからBAとBCが垂直であると読み取る手書き解説
計算結果を図形の性質に読み替え、後の設問で使える情報として残します。

内積が\(0\)なら垂直。これは単なる計算結果ではなく、次の体積の問題を解くための重要な情報です。


立体図は、最初から正確に描けなくてもよい

四面体の体積を求めるには、底面積と高さが必要です。\(\triangle ABC\) を底面とし、\(O\) から平面 \(ABC\) に垂線 \(OH\) を下ろします。

この時点で、\(H\) がどこにあるかを正確に描けなくても構いません。 最初から外心の位置を見抜いて作図する必要はないのです。

ここで注目したいのは、\(OA=OB=OC\) という条件です。頂点 \(O\) から底面の3つの頂点までの距離が等しいなら、垂線の足 \(H\) からも3つの頂点までの距離が等しくなるのではないか。そう考えると、直角三角形の合同を調べる方針が見えてきます。

\(OA=OB=OC\) であり、\(OH\) は3つの直角三角形 \(OAH\)、\(OBH\)、\(OCH\) に共通です。斜辺と他の1辺がそれぞれ等しいので、これらの直角三角形は合同になります。

\(AH=BH=CH\)

したがって \(H\) は \(\triangle ABC\) の外心です。そして前の設問から、\(\triangle ABC\) は \(B\) を直角とする直角三角形だと分かっています。直角三角形の外心は斜辺の中点なので、ここで初めて \(H\) が辺 \(AC\) の中点だと判明します。

四面体の模式図と、直角三角形の合同から垂線の足Hが三角形ABCの外心になることを示す手書き解説
模式図は位置関係を考えるためのものです。H の正確な位置は、作図ではなく条件から確定させます。

図を正確に描いたから \(H\) の位置が分かったのではありません。計算と図形の性質を使った結果、\(H\) の位置が分かったのです。

空間図形が苦手なときほど、正確な立体図を描こうとして手を止めるより、分かっている条件を式にし、計算結果から性質を一つずつ明らかにすることを意識してみてください。


ここまで分かれば、体積は求められる

\(\triangle ABC\) は直角二等辺三角形で、\(AB=BC=\sqrt{2}\) です。よって \(AC=2\)、斜辺の中点 \(H\) について \(AH=1\) です。直角三角形 \(OAH\) に三平方の定理を使えば、高さ \(OH\) が求まります。

\[OH^2=OA^2-AH^2=3-1=2\] \[OH=\sqrt{2}\]

底面積は \(1\) なので、四面体の体積は \(\dfrac{\sqrt{2}}{3}\) です。計算過程をまとめて確認したい場合は、次を開いてください。

(1)〜(3)の計算過程と解答を確認する

(1)AB、BC の長さ

\[\begin{aligned}AB^2&=\left|\overrightarrow{OB}-\overrightarrow{OA}\right|^2\\&=\left|\overrightarrow{OB}\right|^2+\left|\overrightarrow{OA}\right|^2-2\overrightarrow{OB}\cdot\overrightarrow{OA}\\&=3+3-2\times2=2\end{aligned}\] \[BC^2=3+3-2\times2=2\] \[AB=BC=\sqrt{2}\]

(2)内積 \(\overrightarrow{BA}\cdot\overrightarrow{BC}\)

\((\overrightarrow{OA}-\overrightarrow{OB})\cdot(\overrightarrow{OC}-\overrightarrow{OB})\)
\(=1-2-2+3\)
\(=0\)

よって \(\overrightarrow{BA}\perp\overrightarrow{BC}\) であり、\(\angle ABC=90^\circ\)。

(3)四面体の体積

まず \(AC^2=OA^2+OC^2-2\overrightarrow{OA}\cdot\overrightarrow{OC}=3+3-2=4\) より \(AC=2\)。\(O\) から平面 \(ABC\) に垂線 \(OH\) を下ろす。\(OA=OB=OC\) と共通辺 \(OH\) により、直角三角形 \(OAH\)、\(OBH\)、\(OCH\) は合同。したがって \(AH=BH=CH\) であり、\(H\) は \(\triangle ABC\) の外心である。\(\triangle ABC\) は \(B\) を直角とする直角三角形なので \(H\) は斜辺 \(AC\) の中点。よって \(AH=1\)。

\[OH=\sqrt{3-1}=\sqrt{2}\] \[S_{\triangle ABC}=\frac{\sqrt{2}\times\sqrt{2}}{2}=1\] \[V=\frac13\times1\times\sqrt{2}=\frac{\sqrt{2}}{3}\]

まとめ|空間ベクトルで大切にしたいこと

今回取り上げたのは、医学部の入試問題です。しかし、解答に必要だったのは、教科書で学ぶベクトルの基本事項や、以前から学んできた図形の性質でした。難しい問題だからといって、必ずしも難しい公式が必要になるわけではありません。すでに学んだ知識の中から何を選び、どの順序で組み合わせるか。 そこに入試問題の難しさがあり、学習で身につけたい力があります。

この問題で使ったのは、ベクトルの長さと内積、垂直条件、直角三角形の合同、外心、三平方の定理です。特別な空間図形の公式を増やしたわけではありません。

解き進めるための4つの視点

  1. まず式にできる条件を探す空間でもベクトルの計算方法は同じ。
  2. 計算結果の意味を考える内積0から垂直という性質を読み取る。
  3. 既習の図形の知識につなげる合同や外心の性質を使って高さを求める。
  4. 図は考えるために使う最初から正確な立体図を描くことを目的にしない。

空間図形を正確にイメージできなくても、計算と既習の知識から解き進められます。

大切なのは、知識を覚えていることだけではなく、問題の条件や計算結果から、次に使う知識を選べることです。

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