理系専門・受験戦略コラム

連結容器と燃焼の問題|
反応後、何を気体として数える?

この記事で扱うこと

  • 連結した容器で、何が共通で何が変わるのか
  • 燃焼の前後で気体の物質量をどう整理するか
  • 生成した水を、すべて水蒸気として数えてよいか

気体の状態方程式も燃焼の反応式も理解しているのに、連結容器の問題になると、どの気体を何molとして計算すればよいか分からなくなることがあります。

今回の問題では、容器の温度やコックの開閉だけでなく、燃焼後に残る気体と、生成した水の状態まで考える必要があります。


まず、問題を見てみましょう

2006年度横浜市立大学の入試問題を題材に、条件と操作を整理しました。

入試標準問題:連結容器とプロパンの燃焼

コックI・IIでつながれた、体積がそれぞれ 6.0 L、3.0 L、1.0 L の耐圧容器A・B・Cがある。最初は両コックを閉じ、Aにはプロパン2.2 g、Bには酸素9.6 g、Cには気体が入っていない。各容器の体積は一定で、温度は個別に設定できる。気体は理想気体とみなす。

気体定数は \(R=8.3\times10^3\ \mathrm{L\cdot Pa/(mol\cdot K)}\)、27℃での飽和水蒸気圧は \(3.5\times10^3\ \mathrm{Pa}\) とする。

原子量は H=1.0、C=12、O=16。以下、コック部分の体積、液体の水の体積、および酸素・二酸化炭素の水への溶解は無視する。

  1. すべて27℃のまま両コックを開いた後、十分時間が経過したときの圧力を求める。
  2. コックを開いたまま、Aを27℃、Bを127℃、Cを327℃に保った後の共通圧力を求める。
  3. 全容器を27℃に戻し、両コックを閉じてA内のプロパンを完全燃焼させる。Aを再び27℃にしたときのA内の圧力を求める。
  4. 圧力が高くなると、実在気体は理想気体の状態方程式に従わなくなる。その理由を二つ挙げて説明する。

出典:2006年度 横浜市立大学 入試問題。問題文は条件と操作を保ち、弘道塾で要約・表記を整理。

コックを開く・温度を変える段階では、全体の気体の物質量は保存されます。しかし燃焼後は、反応式と相の変化を考え、気体として存在する量を数え直す必要があります。


前半|反応前は全体の物質量を保存する

(1)では、プロパンと酸素の物質量を求め、27℃・全体積10.0 Lに対して状態方程式を使います。

\[n=\frac{2.2}{44}+\frac{9.6}{32}=0.35\ \mathrm{mol}\] \[p_1=\frac{0.35\times8.3\times10^3\times300}{10.0}\] \[\boxed{p_1\fallingdotseq8.7\times10^4\ \mathrm{Pa}}\]

(2)では、コックが開いているため圧力は共通ですが、温度は容器ごとに異なります。全体を一つの温度で扱わず、各容器の状態方程式を足し合わせます。

\[0.35=\frac{p_2}{R}\left(\frac{6.0}{300}+\frac{3.0}{400}+\frac{1.0}{600}\right)\] \[\boxed{p_2\fallingdotseq1.0\times10^5\ \mathrm{Pa}}\]

ここまでは気体の種類も総物質量も変わりません。次の(3)では、化学反応によってこの前提が変わります。


燃焼後、気体として残るものは何か

(3)では、まず全容器を27℃に戻してからコックを閉じます。コックを閉じる直前は温度も圧力も共通なので、物質量は容器の体積に比例します。全体10.0 LのうちAは6.0 Lですから、A内には全体の60%の気体があります。

\[\begin{aligned}\text{プロパン:}&\quad 0.050\times0.60=0.030\ \mathrm{mol}\\\text{酸素:}&\quad 0.30\times0.60=0.18\ \mathrm{mol}\end{aligned}\]

プロパンを完全燃焼させると、酸素は消費され、二酸化炭素と水が生じます。反応前後の物質量を表で整理すると、燃焼後の酸素は0.030 mol、二酸化炭素は0.090 mol、生成した水は0.12 molです。

容器Aの気体の物質量、プロパン燃焼の反応前後の表、生成した水と飽和水蒸気圧を比較する手書き解説
燃焼前後の物質量と、生成した水の扱いを確認した手書き解説。クリック・タップで拡大できます。

水が0.12 mol生成しても、そのすべてが水蒸気として残るとは限りません。ここで27℃の飽和水蒸気圧と比較します。

仮に水がすべて気体なら、その分圧は次のようになります。

\[\frac{0.12\times8.3\times10^3\times300}{6.0}=4.98\times10^4\ \mathrm{Pa}\]

生成した水がすべて水蒸気になったと仮定して計算した分圧が、飽和水蒸気圧を超えなければ、すべて水蒸気として扱えます。超える場合は一部が凝縮し、水蒸気の分圧は飽和水蒸気圧になります。
今回は、計算上の \(4.98\times10^4\ \mathrm{Pa}\) が27℃の飽和水蒸気圧 \(3.5\times10^3\ \mathrm{Pa}\) を超えるため、水の一部が凝縮します。

酸素と二酸化炭素は、合わせて \(0.030+0.090=0.12\ \mathrm{mol}\) です。分圧の和を求め、水蒸気の分圧を加えます。

\[P_{\mathrm{O_2}}+P_{\mathrm{CO_2}}=\frac{(0.030+0.090)\times8.3\times10^3\times300}{6.0}=4.98\times10^4\ \mathrm{Pa}\]

\[P=4.98\times10^4+3.5\times10^3\] \[\boxed{P\fallingdotseq5.3\times10^4\ \mathrm{Pa}}\]

この問題の決め手は、燃焼反応式を書くことだけではありません。燃焼後に残る気体を数え、水が凝縮するかを確認してから状態方程式を使うことです。


設問(4)|実在気体が理想気体と異なる理由

理想気体では、分子自身の体積と分子間に働く力を無視しています。ところが高圧になると、分子同士が近づき、これらの影響を無視できなくなります。

設問(4)の解答例を見る

① 気体分子自身にも体積があるため。
高圧では、容器の体積に対して分子自身の体積が無視できなくなり、気体分子が自由に動ける空間は容器の体積より小さくなる。

② 気体分子間に力が働くため。
高圧では分子間距離が小さくなり、分子間の引力や斥力が気体の圧力に影響する。


まとめ|反応後の気体を確かめてから計算する

この問題では、状態方程式に代入する前に、次の順序で条件を整理しました。

計算の前に確認すること

  1. 操作ごとに状態を区切るコックの開閉、温度変化、燃焼を分けて考える。
  2. 圧力と温度の条件を確認する容器がつながっていても、温度は同じとは限らない。
  3. 反応前後の物質量を整理する反応式から、残る酸素と生成する二酸化炭素・水を求める。
  4. 水が気体として残るか判断するすべて水蒸気と仮定した分圧を、飽和水蒸気圧と比較する。

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