理系専門・受験戦略コラム(数III編)

数学IIIの微分積分はなぜ「裏切らない」と言われるのか?
努力を得点に変える学習法

執筆・監修:弘道塾 塾長
大学受験指導・教室マネジメント歴30年。数学・物理・化学を直接指導。

この記事は、以下のような方におすすめです

  • 数学IIIの微分積分に入ってから、急に数学が重くなった高校生・既卒生
  • 問題集を進めているのに、積分計算・面積・体積で手が止まる方
  • 模試や入試問題で、数学IIIを安定した得点源にしたい方

cos x の導関数を定義から導いた手書きの計算過程

数学IIIの微分積分について、私は「きちんと取り組めば、比較的裏切らない分野」だと考えています。

もちろん、簡単だという意味ではありません。計算量は多く、面積や体積では立式も必要です。入試問題では、複数の考え方を組み合わせることもあります。

それでも、必要な理解と演習を積み重ねれば、努力が得点に返ってきやすい分野です。

ただし、「問題集を何周もすればよい」という単純な話でもありません。微分積分で伸び悩んでいるときは、まず自分がどこで止まっているのかを見ることから始めます。

「微積が苦手」だけでは、何を直せばよいか分からない

同じ「微積が苦手」でも、止まっている場所は生徒によって違います。私は大きく、概念・計算・立式・答案の4つに分けて見ています。

概念・関数の見方公式は覚えていても、少し形が変わると何を使えばよいか分からない。解説を読めば理解できるのに、初見では方針が立たない。
計算方針は立つのに、計算に時間がかかる。途中で符号や係数を間違える。置換積分や部分積分を使うところで毎回考え込んでしまう。
立式微分や積分の計算はできるのに、面積・体積になると式が立たない。
答案最後まで解けるのに、記述問題では点が安定しない。途中の説明をどこまで書けばよいのか分からない。

「計算ミスが多い」と思っていても、実は関数の見方が弱いことがあります。「積分が苦手」と思っていても、実際には面積の立式で上下関係を整理できていないこともあります。

「微積ができない」とまとめてしまうと、必要のない練習を増やしてしまいます。まずは直近の答案を見て、どこで手が止まったのかを確認します。

どこまで理解して、どこから覚えて使うのか

数学IIIを勉強するときに難しいのが、この線引きです。

すべての公式を、問題を解くたびに定義から導く必要はありません。入試問題を解く段階では、必要な公式はすぐに使えなければ困ります。一方で、最初からすべてを公式として覚えるだけでは、少し形を変えられたときに対応できなくなることがあります。

たとえば、cos x の導関数が −sin x になることは、最終的にはすぐ使える状態にしておきたい公式です。ただ、一度は定義まで戻って導いてみると、極限と微分がどこでつながっているのかが見えてきます。

実際の指導資料(数学III・cos x の導関数)
弘道塾の手書き資料。cos x の導関数を導関数の定義から出発し、加法定理とsin h / h の極限を使ってマイナスsin xまで導いた計算過程
定義から出発し、加法定理と sin h / h の極限を経て −sin x に至るまでの過程。塾長が作成したものです。

大切なのは、毎回ここまで導出することではありません。理解する段階と、道具として使う段階を分けることです。公式が使えなくなったときに、どこまで戻って確認する必要があるのか。その判断も数学IIIでは重要になります。

一度は理解する → 最終的には迷わず使えるようにする

計算は、分かっただけでは足りない

微分積分では、考え方を理解したあとに、ある程度の計算量をこなす必要があります。特に積分では、置換積分、部分積分、三角関数を含む積分、指数・対数関数を含む積分、定積分の計算など、繰り返しておきたい処理があります。

解説を見れば分かる、という状態と、入試の時間内に自分で処理できる状態は別です。置換するのか、部分積分を使うのかを毎回長く考え込んでいる状態では、入試問題を解くところまでなかなか進めません。

計算練習は地味ですが、ここは避けて通れません。方針を見たときに、必要な計算へある程度反射的に入れるところまで練習します。

「計算できる」と「問題が解ける」は別

積分計算ができるようになっても、面積や体積で止まることがあります。面積なら、どちらのグラフが上にあるのか、交点はどこか、どこからどこまで積分するのか、絶対値を考える必要があるか、といったことを整理します。

体積では、どの部分を考えているのか、どの方向に切って断面を捉えるのかなど、図形と積分の対応を整理してから式を作ります。回転体であれば、どの部分をどの軸のまわりに回転させるのかも確認します。

最大・最小の問題では、私は基本的に増減表を書かせます。増減表を書かなければ解けないからではありません。定義域・端点・極値・増減を目で確認できる形にして、判断の抜けを減らすためです。

「極値を求めた」ことと「最大値・最小値を求めた」ことは同じではありません。計算そのものができても、こうした確認や立式ができなければ得点にはつながりません。


問題集を増やす前に、どこで止まったかを見る

微分積分が伸びないと、「もっと難しい問題を解かなければ」と考えがちです。しかし、必要なのが問題数とは限りません。

直近の答案を見てみると、公式は分かるが方針が立たない、方針は立つが計算が終わらない、積分はできるが式が立たない、解けているが答案として残せていない、といった違いが見えてきます。

必要な練習は、それぞれ違います。問題集を増やす前に、まず「どこで止まったのか」を確認した方が、次にやることを絞りやすくなります。

微分積分に限っては、第三者に見てもらう価値が大きい

ここまで自分で確認しても、原因を自分だけで判断するのが難しいことがあります。自分では「積分計算が苦手」と思っていても、実際には関数の見方や立式で止まっていることもあります。

もう一つ難しいのが、先ほど触れた「どこまで理解して、どこからは道具として使えるようにするか」という線引きです。数学IIIの微分積分については、私はこの判断をすべて独学で行うのは簡単ではないと考えています。

長く止まっているのであれば、学校の先生、塾・予備校など、数学をきちんと見られる指導者に一度答案や途中式を見てもらうことを勧めます。特別な解法を教えてもらうためではありません。自分がどこで止まっているのかを、外から見てもらうためです。

弘道塾でも、微分積分の相談では答えだけを見るのではなく、答案や途中式を確認します。そこから確認すべきところを絞り、必要に応じて問題を解いたときの考え方も一緒にたどります。概念なのか、計算なのか、立式なのか、答案なのか。今確認するところが整理できれば、次にどこへ練習量をかけるべきかも決めやすくなります。


まずは直近の答案を一枚見返してみる

数学IIIの微分積分は、決して軽い分野ではありません。それでも、必要な理解と計算、立式、答案作成を一つずつ整えていけば、努力を得点につなげやすい分野だと私は考えています。

微分積分が伸びないと感じたら、新しい問題集を増やす前に、直近の答案を一枚見返してみてください。止まったのは、概念なのか、計算なのか、立式なのか、答案なのか。

「微分積分は裏切らない」というのは、何でも量をこなせば伸びる、という意味ではありません。必要なところに、必要な練習を積み重ねた分が得点につながりやすい。私は、そういう意味でこの言葉を使っています。

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数学IIIの微分積分でも、答えだけでなく答案や途中式を確認し、確認すべきところを絞ります。必要に応じて問題を解いたときの考え方も一緒にたどり、概念・計算・立式・答案のどこを確認する必要があるのかを整理したうえで、次の学習内容を考えます。